古澤慎之介
イノベーションが起きにくい古い組織をアップデートする際のポイント。
ビジネスを拡大していくときに、必ずぶち当たる壁が「組織の変革」です。組織の変革といっても色々ありますが、一番重要なのは組織風土だと言えます。 VUCAの時代とも言われ、変化が常態化している環境下では常に新しいチャレンジが求められます。もはやイノベーションは特別なものではなく、連続イノベーションが必要だと言っても過言ではないでしょう。
私の大好きなドラッカーは「企業の目的は顧客の創造である。」と言っています、そして顧客を創造するために「企業の目的が顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである」と述べています。
そして昨今、この変化が激動する中で、経営者は「チャレンジだ!」「イノベーションだ!」と口を揃えて言います。しかし、そうは言いつつもなかなかそれが実現していかないことにヤキモキする経営者の方も少なくないでしょう。これには必ずと言っていいてほどある原因があります。

イノベーションが起きにくい組織にある原因とは
イノベーションが起きにくい企業は、能力が低いのではなく「組織風土」に原因があることが多いと言えます。組織メンバーが創造性を発揮できる組織風土にないということです。
よくあるケースとして「チャレンジだ!」「イノベーションだ!」と上層部が言いつつも、失敗すると再起できなかったり、待遇が悪くなったり、そうならなくともかなりの叱責を受けたりするケースなど、失敗した人にネガティブなことが起きる社風であったり、チャレンジングな企画を提案すると「前例はあるのか?」と超保守的な観点から企画が通らなかったりするなど、チャレンジしようとする気持ちを失わせるような組織環境があったりすることが多いのです。
経済全体が右肩上がりで、真面目にコツコツとやっていれば企業が成長していく時代はそれでよかったのですが、経済は成熟し、常に新しいチャレンジし続けていかないと、売り上げは頭打ちになり、競争過剰な中で体力勝負の消耗戦をし続けていくしかなくなり、最終的にはジリ貧になっていくということもありえます。
たまに、もっと社員にはチャレンジングになってほしい、主体性を持って欲しいと嘆かれる人事の方や経営者の方もいらっしゃいますが、主体性を持つと損したり、チャレンジするコストが高すぎる組織風土や評価制度になっていないかを一度見直してみる必要はあります。みなさんが思っている以上に、メンバーの創造性は高いことが多いです。
イノベーションの種を腐らせる組織風土、イノベーションの芽が出ても摘み取られる組織風土、イノベーションの実がなっても横取りされる組織風土になっていないかという視点で組織を見直してみても良いかもしれません。優秀な社員に限ってやめていくという現象が起きる前に、常日頃から風土設計を見直していきましょう。
組織風土を改革してくためにまずやるべきこと。
組織風土改革をしていく際に大事なことをまとめてみます。当然その会社の規模や状態によって多少変わりますが、骨組みとしてはこんな感じという程度でご参考になればと思います。
【準 備】
①組織風土改革において、まず重要なのはトップ層が組織風土改革をすると覚悟を決めることです。もしあなたが中間層なのであれば、いかにトップ層に問題提起とビジョンを語り巻き込むかが重要になります。これができないと、ほぼ失敗します。
②次にやることは、組織風土改革を全社プロジェクトであることを社内に周知します。これはその会社にもよりますが、改革の主体となる人事部などの部署からの発信ではなく、経営トップ層から落とすことで、その後の動き方が楽になります。
③全社メンバーが何らかの形で参加できるようにする。これが重要なのは、組織風土改革自体の当事者として考えさせることで、トップダウンではなくみんなで決めた理想の会社づくりという意識をもたせることで、最終的な行動に主体性を持たせることができます。
【実 行】
組織風土を改革していく際にまずやることは「現状分析」です。改めて自社の組織風土を分解する機会はほとんどなかったと思いますが、これだけ環境変化が大きい中では、定期的にやってみることも大事です。
自社の組織風土はどうなのかをさまざまな角度から分析していきます。その中で、大事にしておくべき風土もあれば、時代に合わなくなってきているor弊害が出てきている風土もあると思います。これらを箇条書きで可視化していくことからはじめることをお勧めします。
全てを変えるのではなく、良いところはしっかり残していくことも大切です。
これを実行する際に、上層部のみでやるのではなく、できるだけ全社員に対してアンケートを取るなどして、見方の偏りをなくしていくことは大切です。理由としては、人によって見え方は全然違うからです。そしてここで出てきたものに対してその認識が正しいか正しくないかではなく、それがパフォーマンスにどう作用しているのかということをファクトベースで紐付けて考えます。
次にやるのは、「期待作用の明確化」です。これからは組織風土によってどんな作用が必要なのかを洗い出すことです。例えば、個性が活かされるとか、部門をまたいだコミュニケーションの風通しをよくするとか、主体性・チャレンジ精神を発揮しやすくするなど。
期待作用が明確になったら、そうなる社風にするために、現状分析で挙げたどの社風が必要で、どの社風が不要なのかを見ていき、現在足りていない社風を書き出していき理想的な社風を箇条書きにしていきます。
理想が明確になったら、「具体的な行動の明確化」です。それらの社風がしっかりと浸透した未来を想像し、具体的にどのような行動をしているのかを明確にしていきます。
チャレンジする社風であれば、
・メンバーは常に新企画や改善案を上層部に提案している。
・リーダー層はチャレンジするメンバーをしっかりと支援している。
・上層部はチャレンジする人の話を聴き、多少のリスクがあってもやらせている。
・仮に失敗した場合は、失敗から学び次に生かすアクションが取られている。 等
このように理想的な社風が機能したときに、起きているであろう具体的なアクションを各層ごとに明確にしていきます。大事なのは、各層ごとにという部分です。これができないと全体として整合性が取れずに機能しないということが起こります。
具体的な行動イメージができたら、最初のステップとして「やめること」を決めます。
例えば、新しい提案に対してネガティブな意見を言わない。であったり、会議でメンバー層からでた意見を一蹴しないで受け止めるなど。
組織改革だけに限らず、何かをしようとする際には、つい前のめりになってアレをしよう、コレをしようとなりがちですが、必ず「やめること」を先に決めるのが基本です。
やめることが決まったら、まずそれを実行していきます。そしてやめれた段階で、新たにどんなアクションをしていくのかということを実行していくのですが、ここで大事なのは、実行しやすい環境は何か、弊害になるとしたら何があるかというポイントをしっかりと議論することです。実行しやすい仕組みづくりをするということです。
この実行する仕組みができているかどうかで、実行しやすさが変わってきます。褒める仕組みを作るとか、どんなアイデアや改善案でも出せる場を設けるとか、そういった類のもので十分です。実行する立場に立って考えていけば自ずと出てくるはずです。そして、この仕組みが後にその組織の独自性にもなっていくことも少なくありません。
結構地味な作業の積み重ねですが、全社メンバーを巻き込んで素敵な組織を作っていくことがメンバーのポテンシャルを最大限に発揮することもなりますし、それが他社との競争力にもなっていきます。組織風土は自社の無形資産とも言えます。環境に合わせて素晴らしい組織を作っていきましょう。
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