• 古澤慎之介

失敗のリスクをものともせずに行動できる人が飼い慣らしている人間のある本能。

 子供の成長スピードには驚かされることが多い、ついこの間まではアーアーと言っていたのに、いつの間にはすっかりお喋りになっていたり、ちょっと会わないうちに色々なことができるようになっていていつも驚かされます。


 子供の成長スピードが早いのは、毎日が「新しい体験だらけ」ということに尽きます。そして無知が故に好奇心の塊であり、とにかくなんでもやってみる。時に怪我をしたりする事もあるでしょうが、好奇心を満たすために体力が続く限り行動し続けます。

 

 新しい体験の量と成長スピードは間違いなく比例すると言えるでしょう。そして私たち大人の成長スピードが遅いのは、この新しい体験の量が少ないからだとも言えます。逆に言えば、新しい体験の量が子供と同じくらいあれば、私たち大人も子供と同じとはいかないまでも、成長のスピードは上げられるでしょう。


 私たちも子供の頃から、様々な新しい体験を積み重ねてきて成長してきているわけですが、経験したことが増えてくると、そう毎日新しい体験があるわけではありません。社会に出始めた頃は、社会人として新しい体験の毎日増えていきますが、就職して5年もすれば、それなりに仕事のことも理解してきますので、新しい体験は減ってきます。30歳を超えたあたりからは、自分ができる範囲のことだけで済まそうと思えば、新しい挑戦などを避けて立ち回ることもできてしまう


 このように普通に生きていたら、年と経験を重ねるに連れて安全エリアが広がり、成長の燃料になる新しい体験は徐々に減っていきます。そのため、成長し続けるためには「新しい体験」を意識的に作り続ける必要があるわけですが、そうは言っても子供の頃のように、毎日生きているだけで新しい体験があるわけではありませんし、失敗したくない安全でいたいという思考が邪魔して、新しいことに躊躇せずに飛び込めなくなっていたりします。


 しかし、いくつになっても失敗を恐れずにスピーディに行動に移せる人もいます、彼らは勇気があるのではなく、失敗しても大丈夫だという感覚を日々養っています。

 

 今回は、30歳を超えて新しい体験が減ってくる中でも、いくらでも新しい体験に飛び込みやすい脳を作っていくために役に立つポイントについてお伝えしていきます。

私たちから新しい体験を遠ざける無意識の選択。

 新しい経験というのは「いつも通り」ではないということです。しかし私たちは成長すればするほど、この「いつも通り」に戻っていきやすくなっています。少しだけその理由についてお話しします。これを理解していることで、なぜ新しい体験が少なくなっていくのか、新しいことに取り組んでも三日坊主になっていまうことがあるのかということがわかるかと思います。


 経験を重ね、歳を重ねていくに連れて、成長の原動力でもある新しい体験が減っていくのは自然なことですが、自然減にさらに拍車をかけることがあります。それは皮肉にも私たちが経験の中で培われる「行動パターン」です。


 私たちは赤ちゃんのように"積み木"を口に入れたりはしません、その理由は食べ物ではないしおいしくないと経験を通じて知っているからです。朝会社出勤する時にはいつも同じ駅の出口を通り、いつもと同じルートを通り、会社に出勤します。その理由は、それが一番近いということを経験を通じて知っているからです。「えーと、どっちが近いかな」「どの出口かな」「ここを右に曲がって・・・」など何度も通ったルートをいちいち確認せずにほぼ無意識のうちに選択をしています。


 経験から得られた合理的な選択を私たちは無意識のうちにしているのです。

人間の脳は省エネをしたがるものなので、一度学習し記憶として刷り込まれたパターンはいちいち意識せずとも行動できてしまうのです。これは私たちが生きていく上で大切な機能です。しかし、この脳の機能によって、私たちは成長すればするほど無意識のパターンで行動する時間の割合が増えていきます


 私たちの体には一定の状態に保とうとする力が働いています。ホメオスタシスという言葉を聞いたことがある方もいらっしゃると思います、ホメオスタシス(homeostasis)とは、生体が変化を拒み、一定の状態を維持しようとする働きのことをいい「恒常性」とも呼ばれます。気温が暑かろうが寒かろうが人体の体温は36度くらいで保とうとしたりするのもその一つであり、暑い時は発汗し体温を下げ、寒い時は小刻みに震えることで温めたりします。これも暑いから汗を出そうとか、寒いから震えようと意識的に行動するものではありません。そしてこのホメオスタシスには、身体的なものと、心理的なものがあると言われています。


 心理的なホメオスタシスは、例えば、自分の住みなれた家を居心地良いと感じたりするのもその効力であり「慣れ」の機能のようなもので、私たちが安定して生活をしていくために欠かせないものです。しかし一方で、新しい取り組みを始めるてもなかなか続かないのも、このホメオスタシスの力が働いているとも考えられています。「いつも通り」を心地よく感じ、そうでないものを居心地の悪さ(面倒くさい)と感じることで、三日坊主の原因にもなっているようです。


 つまり経験からくる無意識の選択と、人体の本能からくる無意識の選択が、私たちを「いつも通り」に誘うのです。新しい体験を増やしていくには、この無意識の選択パターンを意識的に攻略していく必要があります。そのために私がやっているもので、簡単にできる習慣をご紹介します。


パターンを崩すことに慣れるための毎日の習慣「1日1クレイジー」。

 いつもと同じ時間に起き、いつもと同じルーティンで支度をし、いつもと同じルートで会社に行き、慣れた店で、いつもと同じ仲間とランチをし、慣れた店で酒を飲み、いつもと同じルートで家に帰る、とまあここまで極端ではないにしても割と意識しないとこうなりがちです。もちろんこれ自体が悪いわけではありませんし、決して居心地が悪いわけでもないでしょう。


 このように私たちの日常は無意識の選択で溢れています、ほぼ「いつも通り」を通っています。いつも通りの先には、いつも通りの結果しかありません。安定的な結果を得られるので、失敗確率は劇的に下がるでしょうが、新たな発見がないので、成長もありません。成長のための新しい体験をしていくためには、このホメオスタシスがもたらすパターンを意識的に崩していきます


 まずは意識的に日常を過ごしているようで、無意識の選択パターンの中に生きているということを認識し、これを意識的な選択によって変化を起こしていきます。ただ、大きなことをやる必要はありません、1時間早く起きてみる、朝食がパンを食べていればご飯に味噌汁にしてみる、いつもより早く家を出てみる、いつも使っている会社に一番近い駅の出口とは違う出口から出てみる、電車ではスマホを見ないで過ごしてみる、ランチでは初めて入るお店に行ってみるなど。もちろん全部を変える必要はないですが、ホメオスタシスに逆らった行動を意識的にしてみます


 これによって、何か新しい体験ができるのかと言えば、大した経験はできないでしょう、せいぜい、いつもと違うルートで出社したら新しいパン屋さんを見つけたとか、新しいランチ場を見つけたりする程度だと思います。しかし、ここでの目的は「パターンから外れることに慣れる」ことです。「いつも通り」を意識的に通らないということに慣れることが大切なのです。


 ホメオスタシスは生存本能です「いつも通りの外には危険があるかもよ」という無意識の防衛本能であり、狩猟時代などミスが命に関わる時代にはとても意味のあったものですが、現代社会では無用の長物とまでは言いませんが、そこまで必要な機能ではないのです。今までやったことがない大きな仕事をやりたい人を募っていたとして、挑戦した方がいいことはわかっていても、やったことがないからと躊躇してしまうことなどがありますが、これは機会損失でしかありません、このホメオスタシスを飼い慣らすことで、一歩踏み出しやすい自分を作っていくのです。


 だから小さなことでいいので、この防衛本能の外側に何度も行く事で、そこまで危険ってないよねという感覚を養っていくことが大切なのです。失敗したとしても、新しく入ったランチのお店が美味しくなかったなどの失敗が稀にある程度です。これを毎日、どんな小さなことでもいいので意識的に積み重ねていくことで、「枠の外側に出ても、ほぼ、失敗しないし、失敗しても大したことない」という感覚が身についてきます


 この感覚を養っておくと、大きなチャレンジの機会があったときにも、躊躇せずに「やります!」と言えるようになってきます。毎日、1つ、2つでいいので意識的にパターンを崩していくことを習慣化していくのです。私はこの活動を「1日1クレイジー運動」と命名して、日々意識しています。


 六本木の駅の出口は毎日違う出口から地上にでます、時間がある時はランチでは入ったことのないお店に入ります、同じ店でも頼んだことのないメニューを注文します。こういう小さなリスクとも言えないリスクを日々選んでおくことで、「新しいことに取り組んでもほとんど失敗しない、失敗しても死なない、学びがあるだけ」という感覚を無意識レベルにすり込んでいくことができるのです。


 「チャンスの女神には前髪しかない」という有名な英語の諺があります向かってくるときにつかまえなければ、通り過ぎてから慌てて捕まえようとしても、後ろ髪がないのでつかむことが出来ないという意味で、レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉だとも言われています。不安になって躊躇している間に、機会は去ってしまいます。


 普段からホメオスタシスをしっかりと飼い慣らしおくことで、しっかりチャンスを捕まえられるようにしておきたいですね。また、これは組織づくりにも活きてきます。普段から小さな挑戦やリスクテイクすることを歓迎し、そこから学ぶ文化がある組織と、そうでない企業では、意思決定のスピードが全く違います。変化のスピードが早い時代だからこそ、この感覚をしっかりと組織文化にも根付かせていきたいところです。


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