古澤慎之介
イノベーティブな組織づくりは、リーダーの部下に対するフォロワーシップが鍵。
VUCAの社会と言われる変化のスピードが速く複雑な社会、さらには成熟しきった日本経済の中で大企業や中堅企業では、様々な事業変革を進めています。いわゆるイノベーションと言われるものや、新規事業開発、既存事業の構造改革、そしてそれに伴う組織変革などが急務になってきています。
しかし、経済全体、業界全体が伸びている期間が長かったことからか、多くの企業が、その変革に苦戦を強いられています。
経済、業界と共に企業が成長拡大していきましたが、その成長が頭打ちになり、その結果あらゆる業務のシステム化と効率化を急速に進めていきました。効率化・システム化により業務はルーティン化し、そこで働く人は、そのシステムの一部の機能を担う役割として組み込まれています。また、組織規模が大きくなればなるほど、どうしても縦割り構造、トップダウン型になりやすくなっています。
効率化の代償として、ボトムアップで新しいアイデアや企画が通りにくい組織構造であったり、そもそもイノベーションや新規事業の種がボトムアップで出てきにくい仕組みが出来上がってしまっているのです。
この状況を打破して変革を推進していくのに、トップダウンでいくら「変革だ!」と号令をかけても、人の集合体である組織全体としてなかなか進みません。そこで重要になってくるのが経営トップリーダーをはじめ、各リーダー層の意識変革です。その中でも特に重要なフォロワーシップについて今日はお伝えしていきます。

フォロワーシップとは何か。
昨今、様々な文脈でフォロワーシップという言葉やその重要性については、認識が深まってきているようにも感じます。フォロワーシップとは、一般的に、企業組織においてリーダーを補佐する部下などのポジションの人がリーダーに対して行う自律的な支援を行う態度のことを指します。
フォロワーシップの提唱者と言われる経営学者ロバート・ケリー氏は、フォロワーシップの基本類型として、「批評的思考(批判力)」と「積極的関与(貢献力)」の2つからなると言っています。「批評的思考」とは、上司の指示や考え方が正しいのかを自分なりによく考え、必要があれば上司に対し提案したり、建設的に批判する力であるとしている。ケリーは「批評的思考」と「積極的関与」がバランスよく、ともに高い状態、すなわち自分で考え、積極的に関与する「模範的フォロワー」が理想的であるとしています。(以下図の右上)

このように一般的には、リーダーに対してフォロワーが発揮する態度のことをフォロワーシップと言われています。スティーブ・ジョブズのようなカリスマ的リーダーが引っ張るケースもありますが、実際はイノベーションの種、新規事業のアイデアなど創造性はどこから出てくるかわからないというのが現実だと考えた方がいいでしょう。
リーダーが部下に対して発揮するフォロワーシップが変革の鍵。
イノベーションや新規事業開発が進まない背景には、イノベーションの種が発見できない、種を腐らせる、芽が出ても水をやらない、実る前に刈り取るなどの社内風土が影響しています。
そうさせないためにもトップリーダーだけでなく各層のリーダーは、出てきたアイデアを過去の事例や自分の経験則から即ジャッジするのではなく、僅かな可能性を感じたのであれば、その可能性を高めて、形にしていくために必要フォローは何かという思考に切り替えることが必要です。
そして発案者に対して他のメンバーがどのようにフォローしていけばいいのかを、リーダー自らがフォローの仕方の見本を見せていくことが大切です。この時に重要なポイントは、役職関係なく、発案者を主役にすることです。それが新入社員だろうが、企画を出した人を主役に押し上げ、フォローにまわる。これこそが種を腐らせない秘訣です。
ここでリーダーが主役になってしまうと、ボトムアップでは種は出て来なくなります。リーダーは誰よりも早く出てきた種の可能性に気づき、誰よりも早くフォローに回ることが大切なのです。自分の部門のメンバーにどうフォローすればいいかのお手本を見せるだけでなく、経営者などのトップリーダーにもどうフォローして欲しいのかを掛け合うことも大切です。こうしてイノベーションがしっかりと実るまでの土壌が出来上がっていくのです。
トップリーダー、中間リーダーの方が自分の部下に対するフォロワーシップという視点を常に意識していくことで、自社の本当のポテンシャルを引き出せるようになってくるのです。ぜひ意識してみてくださいね!
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