• 古澤慎之介

部下の心を鷲掴みにするマネージャーのコミュニケーションの秘密。

 部下の主体性やモチベーション向上などに悩んでいる上司の方も少なくないでしょう。また、会社のビジョンをもっと行動レベルで浸透させたいと思っている経営者の方もいらっしゃるかもしれません。確かに一人ひとりがもっと会社のビジョンを理解し、モチベーション高く主体性を持って行動すれば、会社の成長スピードはもっと早くなるでしょう。


 しかし、多くのマネージャーは部下のモチベーションに火をつけるのに苦戦をしているように感じます。


 私はマーケの施策を提案するだけでなく、それを実行して最後までやり切るプロセスに並走してやり切るチームづくりや能力開発を行うことがありますが、その際に組織の(個々の)エネルギーマネジメントという観点から組織づくりをしていきます。その中でも最も重視しているのはそのチームを率いるリーダーのマインドセットとコミュニケーションです。


 リーダーがしっかりと部下のエネルギーに着火し、主体性を発揮しやすい環境を整えて上げることができれば、成果は勝手についてきます。今回は部下の心を鷲掴みにするリーダーのコミュニケーションについてお伝えしていきます。

部下がやる気がないのではなく、上司がエネルギーを奪っている。

 ビジネスにおいて上司が部下に対して行うコミュニケーションの目的は「求められる成果に向かって主体的に行動してもらうこと」これにつきます。しかし、これを意識しすぎたり、最短のコミュニケーションで済まそうとすると「やり方に対するダメ出し」という部下に対する否定や「精神論・根性論・仕事論」などの自分の価値観の押し付けなどに終始してしまいがちです。


 そうなると部下のエネルギーはどうなっていくでしょうか。

みるみるやる気を失っていき、仕事に対するやらされ感が増していきます。「上司に小言を言われたくないからやる」という最悪の状態が簡単に出来上がります。当然パフォーマンスは赤点ギリギリの最低限のパフォーマンスになるでしょうし、月曜日も憂鬱でしょう。


 ほとんどの場合"モチベーションが低い部下がいる"のではなく、"部下のモチベーションを下げる(or上げられない)上司がいる"という方が多いです。それだけリーダーのコミュニケーションは組織のエネルギーに影響を与えるものなのです。


 仕事なんだから本気でやって当然だろ!成長のために言ってるんだ!と反論したい人もいるでしょう。とてもよくわかります。


でもよく考えてみてください。

仕事なんだから本気でやって当然?本当にそうでしょうか。


正しいことを言っているのに、コミュニケーションの効果がない理由。

 「仕事なんだから本気でやるべきだ!」本当にその通りだと思います。それ自体には私もなんの異論もありません。本気でやった方が楽しいですし、成果にもつながるし、自分自身の成長にも繋がりますよね。同感です。しかしこれは私とあなたの価値観がそうなだけです。つまり、「仕事」というものに対する私たち個人の価値観でしかないのです。


 だから、もし私があなたの部下なら、それで簡単に火が着くでしょう。

よし!成長するぞ!頑張ろう!となると思います。しかし、10人部下がいたら、10人全員がそうであることはほとんどありません。実際にはそういう価値観に空気を読んで合わせているだけの人もいますので、見た目以上に少ないでしょう。


 部下よりも仕事ができて経験も豊富な、あなたの言っていることはほぼ正しいのです、ですが、いくら正しいことを言っても相手の心は揺さぶれないのは、あなたの価値観がコミュニケーションのスタート地点になっているからに他なりません。


 コミュニケーションはおしゃべりとは違い、目的があるものです。前述したようにビジネスにおけるコミュニケーションは「求められる成果に向かって主体的に行動してもらうこと」です。この相手に何かしらのアクションをしてもらうには、コミュニケーションのスタート地点は相手の価値観を起点にして設計していく必要があるのです。


 いくら正しいことを言っても相手に響かないのは、コミュニケーションのスタート地点が相手の価値観になっていないということが大きな原因になっている可能性があります。

もちろん、相手に非があることも多々あります、言いたいこともあるでしょう。しかし、どちらにも原因があるのであれば、まずは、何事も自責で捉えて、自分の行動を変えていくことが近道だと考えていきましょう。


相手が「行動する動機」を理解するところからコミュニケーションは始まっている。

 人は動機がないと行動しない生き物だということは、他の記事でも何度もお伝えしていますが、逆に言えば、明確な動機さえあれば人は簡単に行動します。


 仕事では行動力がなくズボラに見える人も、好きな人ができて相手とお付き合いしたいと思った時には、誰に言われるまでもなく相手のことをリサーチしたり、まめに連絡をしたりと、とんでもない行動力を発揮していたりします。このことからも行動力がないのではなく、仕事では行動力を発揮する動機がないために、行動力を発揮できる感情の状態にないだけだということがわかります。


 そうなると、まず働く動機は何かということを知る必要があります。成長のため?それもあるかもしれません、会社のビジョンを実現するため?そうかもしれません、でも一番大きいのは「お金」のためです。(もちろん中には崇高なビジョンの実現するために働いている人もいるのは十分理解していますが、あくまでも大半がという意味です。)


 100%お金のためという人は少ないかもしれませんが、会社に所属して仕事をする目的の70%くらいはお金で、成長や社会貢献などは残りの30%程度というくらいの認識でいた方がいいでしょう。成長できるし社会貢献できるからと言って無償で働く人がいないことを見ればそれがわかるでしょう。(ボランティアなどもありますが、まず自分の生活の糧が担保された上での活動です。)


 しかし、厄介なことにこのお金も単なる道具に過ぎません。この道具をどう使い何を得たいのかも人によって違います。贅沢をしたい人もいれば、何か事業をしたい人もいるかもしれません、何もせずに好きなゲームだけをして過ごしたい人もいるかもしれません。「お金」すら何かの手段に過ぎないといことです。

 

 そうなると、もう一段レイヤーを上げて考える必要が出てきます、何を目的に生きているのかという話になってきます。これも人によって様々ですし、普段からそういうことを考えていないという人もいますが、しっかりと掘っていくと必ず出てきます。


 生きる目的があり、その目的実現の手段の一つとしてお金を稼ぐ、そしてお金を稼ぐ手段として仕事をするわけです。この場合、自分のビジョン実現のために起業している人の話をしているのではありません、あくまでも組織の中で働く人のロジックはこうなっていることが多いでしょう。


 仕事にはお金以外にもたくさんの価値があるのは100も承知です、しかし、人の行動は動機がどこにあるかで決まる以上、その動機のより深い源泉にアプローチしていかないとなかなか行動を促せないのです。上司の正論がいつも上滑りするのは、相手の行動の動機の源泉にカスってすらないからです。


 売り上げを上げるためにどうすべきかというかという会社サイド起点のコミュニケーションをする前に、相手がどのような未来を描いているのか、どのような自分になりたいと思っているのかということをしっかり理解しておくこととが大切なのです。しかしそこを起点にコミュニケーションができるようになると、相手の本質的な行動動機を刺激することができます。


 ここまで理解頂けたかと思います。よし!それならまずは相手が将来どうしてたいのか聴いてみよう!と思っても、残念ながら、相手は警戒するだけで、心のうちは開示してくれないでしょう。まずは開示してくれる状態を作らないといけません。


相手の心を鷲掴みにするリーダーがやっている日々の積み上げ。

  影響力の高いリーダーは、びっくりするくらい相手のことを理解しています。仕事という枠にとどまらず、相手がどんな夢や目標をもち、どんなことに悩み、どんなことに幸せを感じているのかを日頃からよく観察し、質問をし、話を聴き、それを応援してるのです。


 想像してみてください。自分に関心を持ってくれて、自分の話を仕事に限らずよく聴いてくれて、しかも応援してくれている人からもらう仕事のアドバイスや「頑張ろうぜ!」の一言と、普段から自分の仕事論や精神論などのあるべき論という価値観の押し付けや、仕事の成果、数字のことばかりで、仕事以外の自分のことを何も理解もしてないと思っている相手からもらう仕事のアドバイスや「頑張ろうぜ!」の一言。どちらがあなたに力を与えてくれるでしょうか。 


 「頑張ろうぜ!」の一言の重みが全然違うわけです。

何を言うかの前に「誰が言うか」です。そしてその「誰が」は、有名人だとか、能力だとかではなく、自分にとってどういう意味を持つ人が言うかということが何よりも重みになるのです。


 まずは、相手と自分の関係が以下のようになっているかを確認しましょう。

(大事なのはできていかどうかではなく、部下が心の底からそう思っているかという視点から現状の関係性を知ることです。)

 ●私に興味関心を持ってくれている人だと思われているか。

 ●私のことをよく見てくれている人だと思われているか。

 ●私の話をよく聴いてくれる人だと思われているか。

 ●私のことをよく理解してくれている人だと思われているか。

 ●私のことを応援してくれている人だと思われているか。


 かなりまわりくどい記事(自分で言うな・・・)をここまで読んだあなたは、何かしら部下との関係に悩んでいるのではと拝察しますが、この5つの項目に、ハッとされた方も多いのではないでしょうか。大丈夫です、そのことに気がついたことだけで改善のサイクルは周り出します。具体的にどう積み上げていくかをお伝えしていきます。


●私に興味関心を持ってくれている人だと思われているか。

 あなたのどんな行動によって、相手はあなたのことを「関心を持ってくれている人だ」と感じるでしょうか。キーワードは「質問」です、あなたがどんな質問をしているのかを見直してみましょう。「今月の売り上げは?」「どうやったら達成する?」「いつまでにやる?」という質問ばかりしていませんか。休憩時間、ランチ、飲みの席など、それ以外の質問を多めにしてみましょう。そういう機会を意識的に作ることも大切です。

  

●私のことをよく見てくれている人だと思われているか。

 あなたのどんな行動によって、相手はあなたのことを「よく見てくれている人だ」と感じるでしょうか。キーワードは「褒める」です。そもそも褒めていますか?仕事の成果以外の部分で、毎日1回必ず褒めるという習慣を持ってみるのも一つの手です。「そのネイル素敵だね!」「元気で気持ちいい挨拶だね!」そんな小さなことでいいと思います。ただし、相手が褒められて嬉しいポイントを褒めること、お世辞は見抜かれます。


●私の話をよく聴いてくれる人だと思われているか。

 あなたのどんな行動によって、相手はあなたのことを「よく話を聴いてくれる人だ」と感じるでしょうか。キーワードは「目配り・気配り・心配り」です。意外ですよね。聴いてくれる人なのに目配り?と思う方もいるかもしれません、これは相手をよく観察し、聴いて欲しいタイミングで聴いてあげるということです。そのタイミングですぐに聴く時間が取れなくても「話を聴く時間をつくろうか」という声をかけるだけでも大丈夫です。(もちろん約束したら守こと) このタイミングを、目で見て、気で感じて、心で察してあげるということです。


●私のことをよく理解してくれている人だと思われているか。

 あなたのどんな行動によって、相手はあなたのことを「よく理解してくれる人だ」と感じるでしょうか。上の3つをやるだけでも十分そう思われると思いますが、強いてキーワードを上げるなら「相手の気持ちの言語化」です。どんな時も相手の立場に立って何を感じているのかを言語化してあげることで、ネガティブな気持ちもポジティブな気持ちもわかってもらえていると感じます。「それはテンションががるよねー!」「それは嬉しいよねー!」「それは辛いよね。」「それは悔しいよね。」という感じです。


●私のことを応援してくれている人だと思われているか。

 あなたのどんな行動によって、相手はあなたのことを「応援してくれる人だ」と感じるでしょうか。キーワードは「フォローワーシップ」です。仕事でもそれ以外でも、頑張っていること、チャレンジしていることに対して決して自分が前に出るのではなく、上手に支援して手助けをしてくれるかどうかということです。これは具体的な行動的支援だけではなく、応援の意思表示だけでもいい、賞賛したり、人を紹介したり、できる範囲の支援でいいのです。ただし、どれだけ支援したとしても「俺様のおかげ」というスタンスでは意味がありません。


 相手の心を鷲掴みにするリーダーは、何をどう言うかということよりも、部下との関係性の構築に力を入れています。上記に記載したもので難しいことが一つでもあったでしょうか。難しいことは一つもないのですが、日々この積み上げをしていくかどうかです。


心を鷲掴みにするコミュニケーション能力の本質

 コミュニケーション能力といわれるもの60%は相手にとって自分がどういう意味を持つ人なのかという相手との関係性づくり30%は相手の真の動機にアプローチをするという考え方を持ち相手の行動の源泉になる動機を理解すること、そして10%はおまけ程度のテクニックです。巷に溢れるテクニックを駆使しても土台がなければ意味がありません。テクニック本を何冊読んでも改善されないのは、この10%の中でゴニョゴニョやっているからです。


 関係性づくりについては、日々の積み上げです。今できていないと感じたとしても、今日から積み上げていくことができます。積み上げといっても何年もかかるわけではありません、あなたが変われば、相手の反応もすぐに変わってきます。


 個々の行動の動機については、動機のマネジメントに慣れてこないと感覚が難しいかもしれませんが、日々のコミュニケーションの中で意識して観察していけば、徐々にみえてくるはずです。しっかりと相手の価値観を起点にコミュニケーションを設計していくことを大切にしてください。


 テクニックについては、山のように本屋さんに溢れているので・・・そちらをどうぞ。


 最後にもう一度言います「やる気のない部下がいるのではなく、やる気にさせられない上司」がいるだけです。他責ではなく、自責で考え、部下の心を鷲掴みにしていきましょう。



最後までご覧いただきありがとうございました。あなたの素晴らしい商品、サービスによって、多くの人が幸せになることを心より願っています。 ビジネスの無料相談等も受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。


 

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